がんになった女性の亡くなるまでの生き方を描いたドキュメンタリー映画、
「いのちを楽しむ−容子とがんの2年間−」
を観ました。
この映画が以前、渋谷で上映された際に母が観に行き、
その頃母も、祖母の乳がんの事で考えるところがあったため大変心を動かされ、
今回地元で上映会が行われるというので、母に勧められて来ました。
上映の主催者は、偶然昔からの知人でした。
容子さんは若い頃にがんと診断されました。お母さんもがんであることから、がんについて沢山の本や資料を読んで、専門家レベルの知識を身につけ、
結果抗がん剤での治療に疑問を持つに至りました。
「患者よがんと戦うな」などの著作を持つ近藤誠医師のもとで、抗がん剤を使わず、ホルモン剤を用いて必要に応じて放射線治療も受け、
体調が安定した時期を長く過ごしました。
母親をがんで見送り、
当初宣告された余命を過ぎてから、骨転移が元で痛みが酷くなり、体調はどんどん悪くなってしまいました。
容子さんは妹さんと二人暮らしでしたが、周囲の友人達のサポートを受け、
自宅療養を経て、最後は病院で息を引き取りました。
制作者の方が最後にお話されていましたが、この映画のトーンは前半後半で大きく異なります。
前半は、がんに対して楽観的、前向きな容子さんの軽やかで明るい生き方が描かれます。
がんの苦しみは抗がん剤などの副作用から来るものがほとんどで、本来がんは楽に死ねる病気である、
と考えていました。
しかし、痛みや苦しみを伴う限られたケースである骨転移となり、
後半は苦しい中で徐々に命を終えていく姿がありのままに描かれています。
取材を許可したご本人はもちろん、撮影など製作スタッフの方々は大変おつらかったと思います。
けれど、観終えた後は、
自分の人生を潔く生ききった一人の女性への清々しい感動だけが心に残りました。
この映画から私が強く受け取ったメッセージは
自分の生き方は自分で選び取っていくのだから、病気になった時も、
「自分が自分の主治医として、自分で治療方針を決めて行くことができる」
というのが本来の在り方なのではないか、
ということです。
ただ、病院や医師達の中には
「自分が推し進める治療方針が絶対に正しいものであり、患者はつべこべ言ってはならない。
自分の言う事に従えなければ診ることはできない。」
とする考え方を持つ人たちが多くいるのも事実で、
それが患者が主人公、自分が自分の主治医になることの妨げになっています。
映画に出てきた近藤誠医師や、在宅医療を積極的にサポートしておられる網野医師は、その点、
患者の考えや自主性に沿ったサポートをしておられて、
こういう医師が居てくれることが本当にありがたいですし、
もっともっとそういう医師達が増えてくれたらいいなあ、と思いました。
映画では、
容子さんの病状が悪くなり、
毎日放射線照射に通わなければならなくなったため入院を希望したものの、
放射線科のベッドは病院経営の都合上他の科にまわされてしまっていたため、入院が叶わなかったという現状や、
近藤医師自らおっしゃった、ホルモン剤はいつか効かなくなる、骨転移の苦しみもホルモン療法で得られた寛解期の結果として至ったものである可能性も高い、という事実も考えさせられました。
また、会場に来た人たちからの質問には、
反原発活動にずっと携わっていた容子さんは、放射線による健康被害についても熟知されていたと思われる中で、
自ら放射線治療を受けることについて、どう考えていたか知りたい、
といったものもありました。
絶対に正しい方針、ただ一つの正解などないのであり、
どんな方法を選択してもマイナス面やリスクは伴うもの。
けれど、自分で選び取れるなら、
よく勉強し、
マイナス面もリスクも承知の上で、
その全ての結果を自分で受け取っていけば、その全てが正解なのだと思います。
自分の人生は自分が主人公、自分が決めて、後悔したり人のせいにしない。
私も、そんな潔い生き方をしたいです。